Classici giapponesi con furigana
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おぼるるもの
溺るるもの
豊島 与志雄
Leggi 溺るるもの (おぼるるもの) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.690 caratteri · 36 schermate
私はその五百円を、自分のためにも他人のためにも、有用に費すことを欲しなかった。その上、図書館生活のためか、或は貧窮な生活のためか、私は甚しい性慾の減退を感じていて、それが今後の新たな生活に対する不安ともなった。私は五百円を懐にして、学生時代に可なり知ってた各種の花柳の巷のうちの、最も人間味の濃い陰惨な方面をさまよった。そして偶然彼女を見出した。
種々の男の息吹がかかってる彼女の肉体、自分の肉体を資本に生きてる彼女の生活、そういう風に抽象的に見た彼女のうちに、不快な五百円を投じ去るのに最も好都合な場所があり、人生の現実の中にふみこむのに最も力強い戸口があった。
狭い入り組んだ小路、小さな硝子の小窓から至る処に覗いてる無数の女の顔、物に憑かれたように飄々とうろついてる多くの男の影、その中にあって、軽い斜視の……近視の……乱視の……彼女の眼は、一種の美を持っていた。
「先のことは、まるで真暗よ。ここを勤めあげてから……それからどうしようって、当もないの。時々、お客さんが眠ってる間に、夜中に起き上って、眼をつぶって、じっとしてることがあるの、一時間も……。