Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

Leggi 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) di 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 132.395 caratteri · 263 schermate

Aozora Bunko

それじゃ、私から相談があるんだけど……」

とお悦の唇が、いきなり濡れてきて、眼に肢体に、開けっ放しの淫らがましいものが輝きはじめた。

「それは、ほかでもないんだが、もし、その早苗ちゃんの心が、変っていないんだったら、いいじゃないか、最後の晩だからさ、今夜だけあの人を私に貸してもらえない?」

早苗はその時、お悦の糸切り歯が怖ろしく思われたほど、彼女は退っ引きならぬ土壇場に立たされてしまった。

しばらく彼女は、瞳を定めて凝っと考えていたが、みるみる、顔が縄のように引き緊まってゆく。切迫した、喘ぐような、内心でなにかと闘っているような表情をしていたが、やがて、笑いの消えた顔を、懶そうに縦に振った。

「そうかい、済まないねえ。私だって、あの前検事殿には、満更でもなかったんだから。それはそうと、お女将さんの許から、稲野谷というあの情夫、帰っただろうか」

その稲野谷という男は、女将お勢の、情夫というよりも男妾のような存在だった。ところが奇怪なことに、誰もその男の顔を、一度も見たものはなかったのである。それに、いつも来るときは、こっそりと裏口から入って来て、帰ってゆく後姿は一、二度見られたけれど、それがどんな顔か、誰も真実確かめたものはなかった。