Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

みおつくし

澪標・落日の光景

外村 繁

Leggi 澪標・落日の光景 (みおつくし) di 外村 繁 (とのむらしげる) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.889 caratteri · 268 schermate

Aozora Bunko

「春が来た。春が来た」とでも言いながら、桜の枝を担いで、歩き廻りたいような気持を押えて、私は階段を上って行った。

妻の病室へ入る。

「まあ、素晴らしい」

花井夫人がそう言って、上体を起こす。妻もかなり気に入ったらしく、浮浮とした口調で附添婦に言いつけ、枕許に桜の枝を飾らせる。桜の枝には薄桃色の蕾が沢山ついてい、既に数輪は綻び始めている。

「よくこんな大きなのが、持って来られましたわね」

「今年の花見は、これで我慢してもらうんだね」

「私まで、思いも寄らず、お花見させていただきましたわ」

去年の夏、私と妻は上越高原の湯檜曾温泉へ行った。私達は涼風の吹き通る旅館の部屋で、ビールを汲み交わしながら、来年の花時に妻の故郷を訪ねようと、話を決めた。妻の故郷は山形の蔵王山麓にある。山村の春は遅く、梅も、桜も、桃も一時に花開くという。私は何故かそんな山村の春が偲ばれてならなかったのである。が、今はそれどころではない。

「なんだか、『早くあけろ、早くあけろ』って、急きたてられているようで、気持が悪いわね」

「ほんとよ。つまり逆に言えば、『まだか、まだか』ってわけでしょう。厭になっちゃうわね」