Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとり

火の鳥

太宰 治

Leggi 火の鳥 (ひのとり) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.740 caratteri · 76 schermate

Aozora Bunko

その職人には、いま、妻も子も在る。数枝は、平凡な女給である。人生は、こんなものだ。ひとは、たよりにならない。幼いころから、そう教えられ、そうして、そのとおりに思いこんでいた。二十四になって銀座のバアをよして、踊子になった。このほうが、いくらか余計お金がとれるからである。そのとしの十一月下旬、朝ふと眼を醒ますと、以前おなじ銀座のバアにつとめていた高野さちよが、しょんぼり枕もとに坐っていた。

「ほかに、ないもの。」さちよは、冷い両手で、寝ている数枝の顔をぴたとはさんだ。

数枝には、何もかもわかった。

「ばかなことばかりして。」そう言いながら起きあがり、小さいさちよを、ひしと抱いた。何事もなかったようにすぐ離れて、

「おかずは? やはり納豆かね。」

さちよも、いそいそ襟巻をはずして、

「あたし買って来よう。数枝は、つくだ煮だったね。海老のつくだ煮買って来てあげる。」

出て行くさちよを見送り、数枝は、ガスの栓をひねって、ごはんの鍋をのせ、ふたたび蒲団の中にもぐり込んだ。

そうして、その日から、さちよの寄棲生活がはじまった。年の瀬、お正月、これといういいこともなくするする過ぎた。