Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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むめいさっかのにっき

無名作家の日記

菊池 寛

Leggi 無名作家の日記 (むめいさっかのにっき) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.441 caratteri · 43 schermate

Aozora Bunko

つい俺が創作の話を持ち出すと、あの男は突然こんなことをいった。

「僕も、実は昨日百五十枚ばかりの短篇を、書き上げたのだが、どうもあまり満足した出来栄えとは思われないのだ」と、いかにも落ち着いた態度でいった。百五十枚の短篇! それだけでも俺はかなり威圧された。俺が今書きかけている戯曲「夜の脅威」は三幕物で、しかもわずかに七十枚の予定だ。しかも俺はそれはかなりの長篇と思っている。しかるに、この男は百五十枚の小説を短篇だといった上、まだこんなことをいった。

「実は今、僕は六百枚ばかりの長篇と、千五百枚ばかりの長篇とを書きかけているのだ。六百枚の方は、もう二百枚ばかりも書き上げた。いずれでき上ったら、何かの形式で発表するつもりだ」と、いうことが大きい上に、いかにも落着いている。自分の力作に十分な自信を持っていて、俺のように決して焦っていない。俺はこの男に威圧されると同時に、一種の頼もしさを感じた。京都にもこうした真摯な作家がいるのだ。恐らくこの男の名前は、文芸雑誌などには、六号活字ででも出たことはあるまい。が、この男は黙々として長篇の創作に従事しているのだ。