Classici giapponesi con furigana
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ちちのしゅっきょう
父の出郷
葛西 善蔵
Leggi 父の出郷 (ちちのしゅっきょう) di 葛西 善蔵 (かさいぜんぞう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9047 caratteri · 18 schermate
胸を噛まれる気持で冷めたくなった盃を嘗めていたところへ、電報! と言う声が聞えて、寺のお婆さんが取次いで持ってきてくれたが、原稿催促の電報だろうと手に取ってみると、差出人が妻の名だったので、私はハッとして息を呑んだ。
「雪子が死んだ……」そう思うと封を切る手が慄えた。――チチシスアサ七ジウエノツク――私はガアーンと頭を殴られた気がして、呆然としてしまった。底知れない谷へでも投りこまれたような、身辺いっさいのものの崩落、自分の存在の終りが来たような感じがした。
「どうかなすったんですか?」と、お婆さんは私の尋常でない様子を見て、心配そうに言った。
「おやじが死んだんだそうです……おやじが死んだんだそうです」と、私は半分泣声で繰返した。
「とにかくあいつらを呼んでこなくては……」
私は突嗟に起ちあがって、電報を握ったまま暗い石段を駈け下り、石段の下で娘に会ったが同じことを言って、夢中で境内を抜けて一気にこぶくろ坂の上まで走った。そして坂の途中まで下りかけていた彼らの後からオーイオーイF!……と声をかけた。
「おやじが死んだという電報だ。それで明日の朝女房が出てくるというんだが、とにかく引返してくれ」