Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぎゅうなべ

牛鍋

森 鴎外

Leggi 牛鍋 (ぎゅうなべ) di Mori Ōgai (森 鴎外) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 1871 caratteri · 4 schermate

Aozora Bunko

男が肉を三切四切食った頃に、娘が箸を持った手を伸べて、一切れの肉を挟もうとした。男に遠慮がないのではない。そんならと云って男を憚るとも見えない。

「待ちねえ。そりゃあまだ煮えていねえ。」

娘はおとなしく箸を持った手を引っ込めて、待っている。

永遠に渇している目には、娘の箸の空しく進んで空しく退いたのを見る程の余裕がない。

暫くすると、男の箸は一切れの肉を自分の口に運んだ。それはさっき娘の箸の挟もうとした肉であった。

娘の目はまた男の顔に注がれた。その目の中には怨も怒もない。ただ驚がある。

永遠に渇している目には、四本の箸の悲しい競争を見る程の余裕がなかった。

女は最初自分の箸を割って、盃洗の中の猪口を挟んで男に遣った。箸はそのまま膳の縁に寄せ掛けてある。永遠に渇している目には、またこの箸を顧みる程の余裕がない。

娘は驚きの目をいつまで男の顔に注いでいても、食べろとは云って貰われない。もう好い頃だと思って箸を出すと、その度毎に「そりゃあ煮えていねえ」を繰り返される。

驚の目には怨も怒もない。しかし卵から出たばかりの雛に穀物を啄ませ、胎を離れたばかりの赤ん坊を何にでも吸い附かせる生活の本能は、驚の目の主にも動く。