Classici giapponesi con furigana
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ぼたん
牡丹
宮本 百合子
Leggi 牡丹 (ぼたん) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.684 caratteri · 26 schermate
奥さんは、黒い竪絞の単衣羽織の肩も俄にこけたような顔付をして、
「肝心の幸雄の工合がわるくなりましてね」
と云った。
「道理でこの頃お見えなさいませんでした。どうしなさいました?」
「どうした故か頭の工合が悪いらしいんです。……恥をお話ししなければ分らないけれど、急に暴れ出しましてね、刃物三昧しかねない有様なんですから、……本当に……」
石川は、幸雄の寧ろ女らしいくらいの挙動を知っているので却って信じ難いようであった。
「前からそんな癖がおありだったんですか?」
「いいえ、それどころか、内気な代り私みたいな者の子と思えないほど学校だって出来ていたんですよ」
さし組んで来る涙を銀鼠の絞縮緬の袖で押えながら、奥さんは、
「大学を来年出るという間際にこんなことになるんですからねえ」
と淋しく頬笑んだ。石川は、挨拶のしようなく感じた。奥さんが極く若いときの子と見え、幸雄がぞろりとした和服でなどいると、母子には見えないようであった。それ故母親が猶気の毒らしかった。医者がとても家には危くて置けないから病院へ入れろと云うが、普通に云って聞くことでないから、立前を口実にこちらへ寄来す手筈をしてこちらから無理やりにでも病院へ連れ込むというのであった。