Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こぶ

犬田卯短編集 一

犬田 卯

Leggi 犬田卯短編集 一 (こぶ) di 犬田 卯 (いぬたしげる) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 48.259 caratteri · 96 schermate

Aozora Bunko

その日一日中、思い思いの仕事をして、夜も思い思いに過ごしたが、あくる朝になっても口をきく機会はなく、おせきはそのまま野良支度になろうとはしなかった。それに彼女はこないだから多少、自分の体の生理的な異状をも自覚していたのであった。

今夜はお寺で部落常会があるから、各戸、かならず誰か一人出席のこと――という役場からの「ふれ」を隣家へ廻して、そこの老婆としばらく無駄話を交換し、やがて何か見馴れぬ洋服姿の男が自家の門口を入って行った様子に、戻って見ると、それが、はからずも勇だったのだ。

「おや、誰かと思ったら。――どうも、誰かが来たように思ってはいたが――」

半年ばかり見ないでいるうちに、急に、町場の青年らしく、大人びた忰を見た彼女は、最近人に見せたことのないような嬉しげな微笑を顔いっぱいに湛えた。

勇は国防色のスフの上衣を脱ぎ、上り端へ胡座をかいてから、小さい新聞包みを母の方へ押しやった。

「おみやげだ。何にもなくて駄目だっけ。」

母の大好物の鰹の切身を彼は汽車を降りた町で買って来たのである。それに、別に少しばかりの東京風の菓子。そしてそれは勝やおさよや、その他の幼い者たちへ。