Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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りょうしょくのはて

猟色の果

野村 胡堂

Leggi 猟色の果 (りょうしょくのはて) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2611 caratteri · 5 schermate

Aozora Bunko

見定めると五六寸も積った筈の雪の上へ、鷺のような真白な女が、ふんわりと立って居るのでした。白無垢の褄をさばいた下からチラリと長襦袢の緋縮緬が燃えて、桃色珊瑚を並べたような爪先が、雪の上にキチンと揃った美しさは、何に讐えようもありません。

鈴木春信の描いた鷺娘の妖しい美しさを、宗三郎はフト思い浮べましたが、春信画中の美女は、襟が水色で、帯は漆のように真黒だった筈です。ところが宗三郎の眼の前十数歩のところに立って居る美女は、八朔の遊女のように、全身悉く真っ白な中に、髪と瞳の黒さと、唇と裳の紅さだけを点じたのが、比類を絶した凄まじい効果になって、まさに「聊斎志異」の中から脱出した、一番怪奇な妖精としか思われなかったのでした。

「どなたか知らぬが、此処へ入ってはどうじゃ、外は少し寒過ぎるようだが――」

宗三郎は思い切って声を掛けて見たが、女は左横顔を見せたまま、身じろぎもしません。

四半刻、半刻、いや一刻も経ったことでしょう。月はやがて中天に昇りましたが、雪中の女は塑像の如く立ち尽して、眉の毛一本動かそうとはしなかったのです。

窓を開けて、この神秘的な活人画に見入って居る宗三郎の心が、妖しくも乱れて行くのを何うすることも出来なくなりました。