Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

Leggi 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 174.521 caratteri · 344 schermate

Aozora Bunko

それは今日にあって大きい幸福です、自分の性根をこの間に腐らせないでゆける道ですから。Sが人相が変り悲しゅうございます。抜けめないところばかり出ている顔して歩いていて、往来で会って、その人と思えないようでした。ダブつき条件でだけ出来ている鷹揚さ、ひろがりなどというものは、何と急速にはげてしまうでしょう。気くばりと抜け目なさだけの顔してむこうから歩いて来るSを見ると、胸がいっぱいです。あのひと鏡もってるのかしら。人は折々よくよく自分の顔を、検査しなくてはいけません、画家が自画像をかくように、他人の顔として調べなくてはいけません。自分の弱さ、下らなさをそうやって見張り、又いじらしさをいつくしんでやらなけれバいけません。

手紙いつ書いて下さったかしら。わたしも御無沙汰いたしましたが。この頃は毎朝カタカタと門まで郵便出しに出てゆくのよ、よくよくのぞいて、まだ来ていない、と思って、石じきを犬にじゃれられながら戻って参ります。あの石じきの両側には、今山吹の芽がとんがった緑でふいて居ます、いい紅色の楓の稚葉もひろがっていて、石の間には無人の家らしく樫の葉が落ちて居ります。