Classici giapponesi con furigana
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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
Leggi 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 215.557 caratteri · 426 schermate
全く海を思い出すのはこれからですね。特別今私は自分がまぼしくて海が駄目だから、猶更です。芳しい潮の匂い(これは日本の海特殊よ。南はどうだか)色調。つよく軟いうねり。人のいない海辺の淋しさはなかなか詩情を誘います。海はそこに泳ぎ、又雄大な航行をするものがあって、はじめてこの世の美として存在しはじめることは確かだと思います。人間と自然との関係が常にそうである通り。人間が自然の創造の一つではあるが、その人間が宇宙の美も法則もこの世に在るものとして行くというのは何と面白いでしょう。そういう人間をつくる自然の力の大さゆたかさ。ね。自分というものを自分にとって存在するものと知らす人にこの世で出会えた者は、人間冥加と申すべきです。支那の人は士は己を知るものの為に死す、という表現を与えているけれども。こんな三国志的表現はもっと爽快なもっと色調あふれ、諧調ある近代の精神の中に一層複雑な内容で輝いているのでしょう。
人間が病気から徐々になおってゆくとき、生活力が少しずつ少しずつたまって来るとき、人生を又新しいもののように受とり、醇朴に近づき、謙遜にもなるのは、うれしくたのしい思いですね。