Classici giapponesi con furigana
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せいあらば
生あらば
豊島 与志雄
Leggi 生あらば (せいあらば) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 23.046 caratteri · 47 schermate
そして其処に妙な男が一人立っていた。姿は何にも見えなかったが、兎に角或る男が立っていることは事実だった。恐らく黒い布で覆面しているであろう。……そして何かが……盗みが今為されようとしていた。男は畳の数を一枚一枚数えていった。がいつまでも畳の数がつきなかった。……
「夢を見てるな」という意識が茲で一寸返ってくる。がそのままでぐいぐいと怪しい力で引きずられる。……彼は何時の間にか縁側に立って、じっと障子の中を窺っていた。誰も室には居なかった。すると丁度その時、室の中の畳が一枚自然に持ち上って、その下から財布が出て来た。それは先刻の怪しい男の仕業だった。男は身を屈めて財布の中から紙幣を取り出している。……と老婆がじっと屏風の影から隙を狙っていた。「危い!」と思う途端ばさりと音がしてぱっと血が迸った。……その時彼は室の真中にぼんやり立っていた。老婆が傍に斃れている。室の隅の箪笥の上に稲荷様の狐が並んでいる。……妙に何か考え込まれた。そして今すぐに金を返さなければいけなかった。兎に角出かけなければならない。で足を返すと、向うの隅に老婆の顔がげらげらと笑っていた。