Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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たはらしのはんざい

田原氏の犯罪

豊島 与志雄

Leggi 田原氏の犯罪 (たはらしのはんざい) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.957 caratteri · 57 schermate

Aozora Bunko

人間は火を燃さなければいけない、然しそのためにまた心に苦悩を覚ゆるのだ。」

良助はなお黙っていた。

「先夜湯島に火事があったろう。お前の父はあれを初めから見ていたそうだ。そうして今更に火事を感心していた。」

良助はなお黙っていた。

「それから、夕焼のした晩に酔っぱらうと、丸で火事の中に居るようなものだと云っていた。あたりが真紅になって渦巻くそうだ。」

良助はなお黙っていた。

「お前の父は、酒が飲めなくなると、放火でもするかも知れない。」

その言葉をきくと、良助は急に田原さんの側に寄っていって、黙ってその顔を仰ぎ見た。

田原さんもじっと良助の眼の中を覗き込んだ。そして云った。

「いや誰にも、うっかりした瞬間には放火をしたくなることがあるものだ!」

それは殆んど投げつけるような調子であったが、良助は別に驚きもせず、身退ぎもしなかった。彼はただじっと田原さんの側に立ちつくした。

田原さんはまた一歩歩き出した。すると良助も田原さんに引きずられるようにして一歩運んだ。そして二人は黙々として庭の中を歩き廻った。背の高い口髭の濃い成年の姿と、髪を短く刈った背の低い少年の姿と、二つは物とその影のように相竝んで、庭の植込の間をぐるぐると廻った。