Classici giapponesi con furigana
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くじょしょうろく
痀女抄録
矢田 津世子
Leggi 痀女抄録 (くじょしょうろく) di 矢田 津世子 (やだつせこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 32.578 caratteri · 65 schermate
「まあ、お知りあいでしたの」
女史の面には、瞬時、硬い意外の表情が現われたが、すぐと、にこやかに令嬢たちを見まわして、
「このひとたち、みんな、お寿女さんのファンでしたのよ」と言った。
女史は、寿女さんを引き取った時のことから話しはじめた。うっすらと涙ぐみさえしながら話した。令嬢たちも相槌をうちながら、刺繍の巧い人だったと頻りに故人を賞めあった。
話しながら女史の眼は、素早い上眼づかいでわたくしを視る。わたくしが俯向いていたり、他に気をとられているような場合である。女史のこの素早い上眼づかいは、話しの効果を窺っているとも、また、わたくしを窃かに観察しているともみえる。女史の愛嬌たっぷりな如何にも魅力に富んだ面にもかかわらず、この偸み見は何か暗い気持ちにさせられる。この素早い眼づかいの裡に、わたくしは、妙に、打算の閃きと同時に、油断のなさとでもいうようなものを、見たような気がした。
口うるさい楽壇雀どもは、女史のことをいろいろと噂して、独り暮しではかかりも尠かろうし、もう相当に貯ったろう、などとも蔭口をきいている。これは、当っていないことも無さそうだ。