Classici giapponesi con furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Leggi 痴人の愛 (ちじんのあい) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 179.399 caratteri · 353 schermate
である晴れ着の衣裳はまだ幾通りも残っている。どうせ彼女はあのむさくろしい千束町に一日燻っている筈はないから、毎日々々、近所隣を驚かすような派手な風俗で出歩くだろう。そうだとすれば尚更衣裳が必要な訳だし、それがなくてはとても辛抱出来ないだろうに。………
けれどもその晩、待てど暮らせどナオミの使は来ませんでした。私はあたりが真っ暗になるまで電燈をつけずに置いたので、若しも空家と間違えられたら大変だと思って、慌てて家じゅうの部屋と云う部屋へ明りを燈し、門の標札が落ちていやしないかと改めて見、戸口のところへ椅子を持って来て何時間となく戸外の足音を聞いていましたが、八時が九時になり、十時になり、十一時になっても、………とうとう朝からまる一日立ってしまっても、何の便りもありません。そして悲観のどん底に落ちた私の胸には、又いろいろな取り止めのない臆測が生じて来るのでした。ナオミが使を寄越さないのは、事に依ったら事件を軽く見ている証拠で、二三日したら解決がつくとたかを括っているんじゃないかな。「なに大丈夫だ、向うはあたしに惚れているんだ、あたしなしには一日も居られやしないんだから、迎いに来るに極まっている」