Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Leggi 痴人の愛 (ちじんのあい) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 179.399 caratteri · 353 schermate

Aozora Bunko

夫人は片手に鞭を持って、こころもち気むずかしそうに眉根を寄せながら、練習している人々の足元を睨んで、「ワン、トゥウ、トゥリー」―――露西亜人の英語ですから“three”を“tree”と発音するのです。―――と静かな、しかし命令的な態度を以て繰り返しています。それに従って、練習生が列を作って、覚束ないステップを蹈みつつ、往ったり来たりしているところは、女の士官が兵隊を訓練しているようで、いつか浅草の金竜館で見たことのある「女軍出征」を想い出しました。練習生のうちの三人は、とにかく学生ではないらしい背広服を着た若い男で、あとの二人は女学校を出たばかりの、何処かの令嬢でありましょう、質素ななりをして、袴を穿いて男と一緒に一生懸命に稽古しているのが、いかにも真面目なお嬢さんらしくて悪い感じはしませんでした。夫人は一人でも足を間違えた者があると、忽ち

「No!」

と、鋭く叱して、傍へやって来て歩いて見せる。覚えが悪くて余りたびたび間違えると、

「No good!」

と叫びながら、鞭でぴしりッと床を叩いたり、男女の容赦なくその人の足を打ったりします。

「教え方が実に熱心でいらっしゃいますのね、あれでなければいけませんわ」