Classici giapponesi con furigana
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しらぎく
白菊
夢野 久作
Leggi 白菊 (しらぎく) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.486 caratteri · 25 schermate
彼は、それから更に、今までの苦しみに何層倍した、新しい苦しみに直面させられた。彼が、四十年の生涯のうちに一度も体験した事のない……髪の毛が一本一本に白髪になってしまいそうな、危険極まる刹那刹那を、刻一刻に新しく新しく感じながら、死ぬ程重たい花と土の塊まりを、肩から胸へ……胸から床の上へソーッと抱え下した。アザヤカな淡紅色を帯びて、噎せかえるほど深刻に匂う白い花ビラの大群を、静かに少女の枕元に置き直すと、ポキンポキンと音を立てる腰骨を一生懸命に伸ばしながら、長い長いふるえた溜め息を吐いた。そのまま、暫くの間、眼を閉じ、唇を噛んで、荒い鼻息を落ち付けていたが、そのうちに彼は思い出したように眼を見開いて、泥塗みれになった両掌を、腰の荒縄の上にコスリ付けた。その掌で、鬚だらけの顔を撫で上げて汗を拭こうとした。
しかし彼はモウ汗も出ないほど青褪め切っていた。
その薄黒い、落ち窪んだ両眼は、老人のように白々と弱り込んで、唇が紙のように干乾びていた。その額と頬は、僅かの間に生命を削り取られたかのように蒼白く骨張って、力ない皺の波が、彫刻のようにコビリ付いていた。