Classici giapponesi con furigana
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しろが
白蛾
豊島 与志雄
Leggi 白蛾 (しろが) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.700 caratteri · 22 schermate
「ほんとに、済みません。たいへん疲れました。」
もう階段を上りきってしまったのに、彼女は袋を彼に渡しました。袋はずっしりと重く、彼女は少し香水の匂いがしていました。
駅から出ると、彼女は袋を開けて見せようとしました。
「かぼちゃ、とうなす、きゅうり、とまと……それから、まだ何かありました。」
その往来で、袋を開きかねない彼女のしぐさに、岸本はちと驚きました。――だが、不思議に、お千代さんのことが頭に閃めきました。日暮里駅の裏口の、その田舎めいた風情の故もありましたでしょうか。お千代さんなら、中学生の彼岸本に、重い荷物を持たせて伴させたでありましょう。袋の中の野菜物を往来にぶちまけて平気でいたでしょう。ただ、お千代さんはいつも笑ってばかりいましたが、今、彼女は笑顔ひとつ見せませんでした。
「船橋に行って買って来ました。お魚を買いに行ったんですけれど、もうすっかり無くなっていましたから、野菜にしました。けれど、お肉でも添えれば、野菜の方が、おいしい弁当が出来ますでしょう。」
「弁当を拵えなさるんですか。どこかへ勤めていられるのですか。」
彼女は返事をせずに、ただ怪訝そうに彼を見あげました。