Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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つぶてしんじゅう

礫心中

野村 胡堂

Leggi 礫心中 (つぶてしんじゅう) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.190 caratteri · 28 schermate

Aozora Bunko

。

鳥居甲斐守の眼は、この凄まじい詮索に陶酔して、血に渇いた悪獣のように、キラリキラリと燃えました。禁制品を一つ見付ける毎に、頬の肉を引き曲げるような苦笑いが、橋の袖に吹寄せられた町人共を、吹き溜りの紙っ切れのように顫えさせたのです。

「これッ」

甲斐守は下役を顎で呼びました。

「其処に居る若い女、あの下着は絹ではないか、取調べえ」

「あッ」

焔のような眼に射られると知った十八九の町娘は、面を伏せて人混みの中へ潜りました、が、飛附いた手先には何んの容捨もありません。庇い加減に押し包んだ群衆の中から、ズルズルと引立てて、

「顔を上げろ」

右手に髷を取り、左手を円い頤に掛けて、グイと顔を上げさせました。

「…………」

群衆がザワザワと波打つような美色、――少し褪せた真珠色の頬、恐怖に見開く黒燿石の眼、赤い唇の色もありませんが、非凡の美しさは、何者にも損ねられなかったのです。

「其方は、いずれの者じゃ、親共の商売、名前、真っ直ぐに申立てえ」

「木場の廻船問屋、増田屋惣兵衛の娘、藤と申します」

娘は蚊の鳴くような声で、これ丈け言うのが精一杯でした。

「なに? 廻船問屋? フム、此頃まで株式仲間と組んで、江戸大阪の廻船に、不当の利潤を貪ぼり、今は入牢吟味中の増田屋惣兵衛の娘か、――そのような者の娘なら、定めし着類持物に贅を尽して