Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 126.598 caratteri · 254 schermate

Aozora Bunko

黙々と、一坪掃けば、一坪だけのもとの平和と静けさが、自分の手によって、大地へ取りもどされて来る。そんな小さい祈念を、せめてもの慰めにでもしているような風だった。

「おや?」

そのうちに、彼はふと、荒廃した庫裡と物置の裏手に気づいて、遠くから咎めた。

「誰だい。そこにいるのは。まだ誰か残っていたのかね」

「妙達さんですか。私ですよ。私でございまする」

近づいて来た男を見て、堂守の妙達は、眼をみはった。

「なんだ、雨露次さんかよ。さっきから、探していたのに」

「妙達さん。家内は、どこにおりましょうか、ご存知ではございませぬか」

「だから、お内儀の身になって、おまえさんの方を、心配していたのだよ。ほかの捕われの仲間は、ここの山門から皆、ゴミでも撒くように、解き放されたから、多分あんたも、一時どこかへ、立ち去ったに違いないと思ってさ」

「はい、他の衆と同様に、縄は解かれましたなれど、あの朝、妻の卯木も、ここへ囚われて来ていたはず……。その卯木が、どこにも見当りませんので」

「ああ、それでか」

「どこへでも行きおれと、山門から、突きとばされましたが、一時とて行くアテはなし、家内の安否も知れませぬので、もしやまだ寺内ではないかと、覗き歩いていたわけでございますが」