Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 126.598 caratteri · 254 schermate

Aozora Bunko

……したが、お夫婦の姿をここに見、そぞろ後宇多の法皇が世におわせし頃もなつかしゅう思わるる。さても、変ったものよなあ」

「はしなく、こんな所でお目にかかって、消えも入りとうぞんじまする」

「はて。何をそんなに」

兼好は、首をふッた。

ひところ、院の内や、京わらべの口の端に、二人の浮名が、かしましく取沙汰された当時のことは、薄々だが、彼の記憶にも残っている。

いまなお、それを恥じるのかと、兼好は、自分の遁世とひきくらべて、なにか歯がゆく考えたようだった。

急に、ことばをかえて。

「元成どの。わしは急がぬ旅じゃが、ひと夜を共に、もっと来し方、ゆく末、語りおうてみる気はないか」

「願うてもないことではございますが」

「扇店は、たそがれに、莚を巻くのか」

「いえ、この生業も、木賃のあるじが、長谷のお賽日には人出もあるゆえと、私たち夫婦に稼ぎの道をおしえてくれたのでございました。筆硯も、扇の品々も、貸し与えてくれたもの。それさえ、あるじへ戻せば」

「そうか。では、こういたそう。これへ来て、初瀬詣でをせずに過ぎるも心ないわざ。わしは、入相の鐘のなる頃、ふたたび、ここへ帰って来る。