Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate
逃げ腰の尻を槍で突きあげられて、奇妙な恰好で宙をつかむ者などもあった。そして一場の黒いつむじの下に、幾人かの死者はもう大地に見すてられている。
これは極端な盲目沙汰だ。
火いたずらも、時により危険極まる。
さなきだに、この辺は、赤城颪しの蕭殺たる風土と人心を、あるがままにしている坂東平野の広茫なのだ。
古い荘園制度がくずれ、半農半武士の武族たちが武家勃興の時の波にのッて栄えだし、多少、文化のタネがこぼれだして、人の生活らしき姿が近世咲き出して来たとしても、平ノ将門が生き暴れた時代から何世紀でもなく、原始的な自然児の爪あとはまだ郷土に生き生きとしていた。――で常々の、新田足利両国間の絶えないいがみあいなども、将門以来の遺風といえないこともない。いまに始まったものでは決してなかったのである。
だから、それも武士と武士との対立だけでなく、領下の雑人や百姓までが、ひと口に、
「――新田いなご」
と、彼を下風に呼べば、また一方の住民も、
「なんの、足利とんぼが」
と報いて、野性の歯を剥くのを忘れないといった風なのだ。
いわば相互に、悪気流の支度は充分にできており、機ッかけさえあれば、いつでも火となりうる形になっていた曠野の枯れ葦みたいなものだった。