Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate
が、彼は、反り身になるまで、振返らされた。なぜなら、ほとんど血の気のない彼方の白い顔も、眸の矢のとどくかぎり、馬上の彼の背を、追っている――。
なぜか、高氏は恐怖された。
伊吹の悪酔、あの夢中感。
そんな自責だけでもない。――似ぬところも多いが、どこか登子に似たところがあったからだった。彼は二つの顔を、二つにわけて、あたまに描くことが不可能なほど、みだれていた。
「若殿。御下馬を」
口取の右馬介にいわれて、気がつくと、身はいつか、喧々たる闘犬の声、見物人のどよめき、耳もと近い太鼓の音など――黄塵万丈の中に来ていた。
闘犬場はわき返っている。
矢来の外は、数千の見物だった。一勝負の終るごとに、潮のような声と、黄いろい埃つむじが、薄く立つ。
諸大名の仮屋は、袖矢来の東西にわかれ、各家それぞれの紋幕が、紋づくしでも見るように、はためきを競ッていた。
出場の犬はみな、それら諸侯の“持ち犬”であり、あらゆる日頃の飼育と訓練をこめて来たのだ。――勝てば、執権高時の賞辞や、莫大な“賭け物”を一挙につかむ。
熱狂ぶりは、むりもない。
だが、これを。
かりに、圏外の冷静な眼で見たならば、なんとも戯画的な“時代の縮図”と見えたであろう。