Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate
その者たちを、どう思うのだ。我欲の贄としてもかまわぬつもりか」
「いらざる世話だ。そんなものをかまッていたら、一生の日が暮れちまう。この世を楽しむほかに何がある。人間ならそれが本筋なんだよ。きさまのようなのを木偶というのだ。知らねえか」
「よしっ。そんなに楽しみが欲しいなら、往生という安楽を与えてやろう。あの世で臍を噛んでも追いつかぬぞ」
「けッ。笑わすな」
太刀は撲りかかった。伝次は振り廻す。或いは飛躍し、或いは追ッかけ合って猛ぶ。白い角を持ちあった三獣の影が跳び交わしているのに似ている。
ついに、その一ツの影が、がふッと、血音を抱いて起たなくなった。返り血は、御厨ノ伝次の横顔を半分消した。思わず、彼が左の肱で、眼をこすったせつな、これも手負い猪となった藤五が、
「畜生っ」
ひと声、迫った。
その胸へ、伝次の頭がぶつかった弾みに、二つの体は、後ろの谷へ転落していた。谷は浅かったのであろうか。まもなく、今切藤五ひとりだけが、血みどろな手で、そこらのクマ笹をつかみ、這い上がッて来た。
血泥にまみれた藤五の影は、悪念のかたまり、そのものだった。――勝った、もうしめたもの! よろめき歩きながらもニタついていた。