Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate
「あれから……そなたはわしの後にでもついて来たのか」
「いいえ」
「では待ったのか。ここで」
「なんの、そのようなお約そくはしてもおりませぬ。小殿こそ、どうなされたのでございます?」
「……わしか」
漠と眼をふさいだ。
たったいま遁れて来た鳰の白い腕や執拗な唇が、皮膚にも厭わしく考え出される。高氏はいまいましげに眼をみひらいた。そしてあの腕や唇が、もしこの藤夜叉のものであったら……と、その眸は思わず彼女をむさぼり眺めた。
小むすめの本能は敏感である。あいての眼の裏に潜むものをすぐ読んでギクとふるえに襲われたらしい。踵は意識のない後ずさりを見せ、なにかを守るような姿勢で両の手を交叉に、じぶんの胸を抱きすくめた。
「藤夜叉」
高氏は跳びついた。
酒がなせる業とはいえるが、彼女の方にも、高氏の何かに惹かれているたゆたいがあったのは是非もない。逃げもせずただ交わそうとのみして恟めた肩を、高氏の酔いの手がもうワシづかみにつかまえていた。
「恐いのか、この身が」
「い、いいえ」
「なぜ逃げる」
「逃げはいたしませぬ」
「でも、おののいている」
「……あなた様だって、まっ青なお顔をしていらっしゃいます。