Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(七) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 330.262 caratteri · 662 schermate
「いいえ、人誰もの苦患はわきまえておりまする。ましていまのような世の中。それを憂い辛いとは申しませぬ。……ただせめて、人の真情がほしいのです」
「真情とは、男の」
「もとより女でございますから」
「内裏にはそれすらないか」
「みかどはおひとりでいらせられます。かしずく後宮の私たちは、廉子さまはじめ二十人もの妃嬪で御寵を競っていました。どうして真実が生れ出ましょう」
「真実になれば燃えように」
「そのような炎と炎は、おたがいを喘ぐ火宅とするほかのものではありません。それがあの怖ろしい後宮という所です」
「ここならば」
「でも、殿のお心はまだわかりませぬ。この私というものは、恩賞の品代りに、みかどから殿へ下されたもの。私は人形です。自分の気もちを余り言ってはいけないのでした」
「いやそなたは奴隷ではない。誇れ、義貞の想われ人だ。義貞がおせがみしていただいたそなたなのだ。人形のたましいはわしが入れてやる」
義貞は杯を横へ抛った。――投げると見えたほど朱の杯は輪を描いてころがり、そしてとっさに一匹の豼貅は、その盲目的な勢いとたくましい体の下に勾当の内侍をねじふせていた。裳のみだれ、黒髪のふるえ、彼女に与えられるたましいとは彼女を窒息させるほどなものだった。