Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(七) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 330.262 caratteri · 662 schermate
そして泣き濡れるあいだにも、ふと卯木の胸には、赤鶴が自分へ言った、あのいまわしいことばが、自分の予感そのままな実感となって来て、一ばい悲しさがせぐられていたのだった。
「はて、ふたりとも聞きわけのない……」
正成は、叱った。
「そちたちは、元々、いぜんお仕え申していた女院の御所に浮名をのこして、生涯を巷のうちにと、御所をあとに逃げ落ちたときから、すでに周囲の絆は断ち、また治郎左は、伊賀の服部家の跡目も武門も、とうに捨てた決心ではなかったのか」
「……はい」
「もう忘れたのか。――巷では名を雨露次とかえ、卯木もその遊芸人の妻だった。だが、浮草のような生活の中にも、夫婦だけの生きがいを、また愉しみを、見つけかけていたのではなかったか。……そして芸の道に深く入るほど、そこに世間の人をよろこばしてまた自分も生きるよろこびを知り、一念、それを以て生涯しようという望みであったはずであろうが」
「…………」
「なぜその初一念へ返れというのに素直に返らぬ。――正成は武門、しかし、正成の骨肉のひとりが、そのような道へ迷れ出たことを、かなしむどころか、じつはひそかに心ではよろこんでいたのだ。