Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(三) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 222.108 caratteri · 446 schermate
「いや、宮こそ高徳を、捜しておいでかもしれぬ」
彼の彷徨などは、たれ知る者はない。そしていつか、終日の帝の御慰安の日も暮れていた。
夕桜の蔭はもう墨色だった。しかし、なおまだ一刻の名残りの酒もりが、帝座に武士も交じえて酌まれていた。
その果てである。酒豪でおわす後醍醐もしたたかお酔いになったものだろう。……やがてのこと。儚い今日だけの歓楽も早や尽きたかのころ、妃たちの手にもおえぬ後醍醐の大きなお体を、ひとりの武士が抱え扶けながら、行宮の方へよろよろ歩いて行くのが見えた。
「…………」
高徳は、まぢかに見た。
身を豹のごとく、木蔭の闇にかがめながら、後醍醐とその武士とが、襟くびに手と手を絡ませあい、あだかも、日頃の酒友か何ぞのように、
「愛い奴。あははは」
「愛い君。ははは」
と、共に酔歩を愉しんで行く影を眼のまえに見て少なからず驚いたのだ。
武士は道誉なのである。
後醍醐は、しばしば、その道誉の襟がみをつかんでは、彼の入道頭をガクガク小突き廻しながら、こんな風な酒言も弄しておいでだった。
「可惜な奴よ。なんで汝れは公卿に生れず、鎌倉武士などに生れついた。