Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(五) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 252.330 caratteri · 505 schermate
――するとその土ぼこりはたちまち全面にひろまってきた。もうもうと、何かが泰家に迫っている。しかし泰家にはその塵煙や草ぼこりのうちを駈けみだれる凄まじい騎影や歩兵が、敵か、自軍か、それすら見分けられなくなっていた。すぐそばの一将が、朱になって落馬し、彼の馬も、いななき狂った。
「塩田っ。どうしたのだ?」
「寝返り者です」
「それ見ろっ。して何者が」
「どの手勢とも分りませんが、新田の騎馬隊に陣をひらいて、わざと中軍へみちびき入れた不届者があります。ここは危ない。はや川向うへお立退きを」
「ばかなっ」
泰家はきかなかった。
「なお、二心の輩もあろうことは、あらかじめ覚悟していた。退くやつは退け。泰家は死ぬまで戦うのだ」
「死に場所もございましょう。ご短気すぎる」
老将の塩田陸奥は、耳もかさない。
かえってあたりの近習たちへ。
「恵性(泰家)どののお身に万一あらすな。お怪我なきよう、ともあれ先に川向うまでお連れ申せ。危険だ。わからぬ。逆睹しがたい形になった。決戦はわれらの手でする」
「塩田。わしには、見物していよと申すのか」
「ぜひもございません。裏切り者につづく裏切り者の続出。