Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(五) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 252.330 caratteri · 505 schermate

Aozora Bunko

「舟を。……与えるのですか」

「そうだ。棗とやら、それへ乗って、どこへなと翁に送ってもらうがよい」

「えっ。で、では」

ぼろぼろ……と二つの顔から涙が散った。感情に富むらしい乙女の泣き顔も、皺くちゃとなった翁の嗚咽も、せつな自分までがつりこまれそうで、和氏には見るにたえないものに見えた。で、師氏がなお何か、ふたりへ告げている声もあとに、和氏は先にむしろ小屋を出て、もう砂浜の彼方をうつつない姿で歩み去っていた。

「兄者」

追いついて来て。やがて師氏が、ぼそッといった。

「つい、うかと、御台所のご消息などのことは、訊くのも忘れてしまいましたが」

「いや、訊いても知るまい。さっそく小舟一つ廻してやれ」

「こころえました。ですが兄者、思わぬ者に会いましたな」

「ムム、あれも一つの犬神憑きか。いわば美しい犬神憑きともいえるだろう」