Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(五) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 252.330 caratteri · 505 schermate
しかし家々の破れ戸から覗き見していた庶民たちはかえってほっとしたような色でもあった。
「あ、足利どのじゃ」
「え。足利どのか」
「おととい、きのうと、六波羅中では、法要のお営みとかで、橋止めされていたが」
「では、それも終って、何かで参内されるのじゃろ」
「ならば物騒な噂などは?」
「それもまんざら嘘ではないかもしれんが」
「いや宮方のひとり角力よ」
「そうだ、ひとり角力よ。まことの戦沙汰なら、足利どのが、ゆらゆら、この雪の日を、大路を打たせて通るわけはない」
しかし、これらは庶民のふし穴観測に過ぎないもので。――やがて粉雪のけむる果てにその車廂も騎影も没して見えなくなったと思うと、辻を斜めに、あるいは大路を横ぎッて、どこの武士か、神泉苑の宮御所のほうへ馬にムチ打って飛んで行くのがしきりに見られ出していた。
宮御所では明けがた作戦を終って、千種、新田、一おうみなおのが屋敷や館へ引きとって行ったあと、宮もまた、
「このまに一睡を」
と、表の守りを、竹原八郎らの親衛隊にまかせ、奥へひきこもられていた。いやゆうべは大杯の酔を通したことでもある。つい深々眠って、妃ノ宮のおいたわりもよく知らなかったほどらしい。