Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんのゆうしゅう

秦の憂愁

豊島 与志雄

Leggi 秦の憂愁 (しんのゆうしゅう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9389 caratteri · 19 schermate

Aozora Bunko

「送らせますから、すぐお帰り下さい。」

返答の余地をも与えぬほど厳とした言葉だった。先刻の青年の一人が三輪車を走らして来た。星野は青年と並んでそれに乗った。車夫は何等の好奇心も興味もないもののように、ペダルを踏んだ。

星野はそれきり、秦啓源には逢えずに、日本へ帰った。迂濶にも秦の居所を聞いておかなかったのである。然し尋ねたとて秦は恐らく教えはしなかったろう。

出発まで、彼は秦を探したが、探す方法の手掛りさえもなかった。或る時、南京路の人込みのなかで、あの時の青年の一人を見かけたように思ったが、先方で隠れたのか、即時に見失ってしまった。彼は四日後に、早朝、飛行機で日本へ飛ぶことになった。

彼は出発前、秦啓源への伝言を私に託した。もしも逢えたら……と私は答えた。その代り私は、張浩の死を彼に知らせた。政治的なまたは思想的なテロの犠牲ではなく、なにか商取引にからんだ事件らしいと、私は力説したが、彼はなかなか信じなかった。ただそう信ぜよと言っても無理だったろう。然し私の言葉は真実なのである。私はこの事件によって、秦啓源の生活をかなり詳しく知ることが出来た。