Classici giapponesi con furigana
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あな
穴
黒島 伝治
Leggi 穴 (あな) di 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.328 caratteri · 23 schermate
「たすけ……」老人は、あがき唸った。
土は、老人の憐憫を求める叫声には無関心になだれ落ちた。
兵卒は、老人の唸きが聞えるとぞっとした。彼等は、土をかきこんで、それを遮断しようがために、無茶苦茶にシャベルを動かした。
土は、穴を埋め、二尺も、三尺も厚く蔽いかぶせられ、ついに小山をつくった。……
六
これは、ほんの些細な、一小事件にすぎなかった。兵卒達は、パルチザンの出没や、鉄橋の破壊や、駐屯部隊の移動など、次から次へその注意を奪われて、老人のことは、間もなく忘れてしまった。
丘の病院からは、谷間の白樺と、小山になった穴のあとが眺められた。小川が静かに流れていた。栗島は、時々、院庭へ出て、白樺のあたりを見おろした。
彼は、あの土をもり上げた底から、なお、叫び唸る声がひゞいて来るような気がした。狭い穴の中で、必死に、力いっぱいにのたうちまわっている、老人が、まだ、目に見えるようだった。彼は慄然とした。
日が経った。次の俸給日が来た。兵卒は聯隊の経理室から出張した計手から俸給を受取った。彼等は、あの老人を絶滅して以来、もう、偽せ札を造り出す者がなくなってしまったと思っていた。