Classici giapponesi con furigana
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はこねのやま
箱根の山
田中 英光
Leggi 箱根の山 (はこねのやま) di 田中 英光 (たなかひでみつ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.963 caratteri · 33 schermate
山頂に近づくに従って、烈風が全山をゆるがす勢いで全身に吹きつけ、私の二重廻しも一郎のオーバーも吹きまくり、子供はたじろぎながら顔を顰めて歩いていた。路ばたの巨松の曲りくねった枝に、大きな鷲に似た怪鳥が一羽、羽毛を風に煽られてとまっていたが、私たちの姿の近づくのを見ると、凄まじく翅を鳴らして飛びさり、いかにも深山らしいもの凄い風景だったが、一郎は未だ悲しそうな鼻声で、「お父さん、お山に登りたいな、お山に」
一郎の山に登りたいと言うのは、やはりガサコソと路のない路を掻きわけて、藪や茨の中を攀じ登って行きたいのに違いなかった。人間の体力は容易に参るものではない。その前に先ず精神力が参ることを知っている私としては、その一郎の願い通りにはしてやりたかった。しかし、下駄穿き、二重廻しの不自由な身仕度に、でかい胴体の親父は、さっきから一郎のいわゆるお山登りで、手足の露出した部分は傷だらけ、おまけに足袋の中にも泥が一杯につまり、二度とお山登りを繰返す気はしない。そこで、「こんだ、また近路があったらね」と騙し騙し、たとえ近路らしいものがあっても、この路を上れば飛んでもない処に行ってしまうと、威したりして、暫くはまた右に折れ左に曲る街道を登り続けて行ったが、一郎がもう我慢できないように、「お父さん、お山まアだ」