Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かがりびのおんな

篝火の女

吉川 英治

Leggi 篝火の女 (かがりびのおんな) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.727 caratteri · 56 schermate

Aozora Bunko

他にない)

と、いつも笑って云う。

戦焦けとでもいうのか、顔の皮膚は南蛮鉄のように黒くて艶があった。冑の緒のあとが薄白く焦け残っている程なのである。豪快な性質で、いつも軍功帳の筆頭には坐るが、決して小才には立ちまわらない、むしろふだんは眠たげに口を結んで、底光りのする眸を濃い眉毛の下に欝陶しそうに半眼に塞いでいるといった風だ。

『多寡の知れた女ひとりに、そう立ち騒ぐこともあるまい。誰よりもよく八雲の顔を見知っている此方が、一鞭当てて捕えてくる』

そう云うと、相木熊楠は、自身で一頭の駒を曳き出して来て、舟橋の架け板のうえを巧みな蹄の音に躍らせて、忽ち、河彼方へ飛ばして行った。

『なんだ、人を制めておいて、自分は怖しく気早に駈けて行く。いつも、先陣をやるのはあの手だな』

魚住十介が呟いて見送っていると、

『それアその筈だよ』

と、番士のひとりが、小屋の中で相槌を打った。

『なぜ? ……。何か、意味があるのか』

『あるとも、知らないのか』

『知らん』

『迂遠いな。御家中で知らぬものはない位な話だぞ。――あの相木熊楠という男は、以前、東郷五郎左衛門に就いて北条流の軍学を学んでいたことがある』