Classici giapponesi con furigana
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かがりびのおんな
篝火の女
吉川 英治
Leggi 篝火の女 (かがりびのおんな) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.727 caratteri · 56 schermate
娘は、ちょっと顔いろを変えて、
『ばかな云うて、おらは何も、連れて行かれるような悪い事はしないもの』
『だがサ、怒っちゃいけねえよ、ゆうべ北条方の足軽が探していたのは、女だと聞いたから、それで心配してやったんじゃないか』
『女なら誰でも捕まるという法があるもんじゃない』
『けれど、その女も美麗な女だという噂だし、おめえも、美しい方だから』
『知らないよ』
『あ痛っ』
外郎売は顔を抑えた。煎豆が一粒、その手の指のあいだに挾まった。
娘は、ぷんぷんと、怒り顔に、足を早めてゆく。
だが、どう侮辱されても、外郎売は離れない。後になるか先になるか、きっと彼女の影から半町とは距たない間にあった。
『ちっ……』
舌打ちをして田舎娘は何か思案していたが、次の日、古河の町へ入ろうとすると、ここはもういっぱいな軍馬であって、北条方の里見義介や、千葉新助などの率いて来た房総の兵が、約七百ほど屯しているのであった。
いや、ここばかりではない。
附近の部落や利根川べりの要所要所、いたる所に兵が居、馬が嘶いていた。平野には、母衣を負った伝令の騎馬武士が駈けているし、畑には、茶褐色の具足をつけた足軽が、槍を伏せて、夜となく、昼となく、西の方を見張っている。