Classici giapponesi con furigana
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たんでき
耽溺
岩野 泡鳴
Leggi 耽溺 (たんでき) di 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 55.597 caratteri · 110 schermate
と、僕は手をたたいて飯を呼んだ。
「お父さんは御飯を頂戴したら、すぐお帰りよ」と、お袋はその世話をしてやった。
僕は女優問題など全く撤回しようかと思ったくらいだし、こんなおやじに話したッて要領を得ないと考えたので、いい加減のところで切りあげておいたのだ。
飯を独りすませてから、独りで帰って行くのらくらおやじの姿がはしご段から消えると、僕の目に入れ代って映じて来るまぼろしは、吉弥のいわゆる「あの人」であった。ひょッとしたら、これがすなわち区役所の役人で、吉弥の帰京を待っている者――たびたび花を引きに来るので、おやじのお気に入りになっているのかも知れないと推察された。
一四
その跡に残ったのはお袋と吉弥と僕との三人であった。
「この方が水入らずでいい、わ」と、お袋は娘の顔を見た。
「青木は来たの?」吉弥はまた母の顔をじッと見つめた。
「ああ、来たよ」
「相談は定まって?」
「うまく行かないの、さ」
「あたい、厭だ、わ!」吉弥は顔いろを変えた。「だから、しッかりやって頂戴と言っておいたじゃアないか?」
「そう無気になったッてしようがない、わ、ね。おッ母さんだッて、抜かりはないが、向うがまだ険呑がっていりゃア、考えるのも当り前だア、ね」