Classici giapponesi con furigana
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たんでき
耽溺
岩野 泡鳴
Leggi 耽溺 (たんでき) di 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 55.597 caratteri · 110 schermate
「………」まだ物を言わなかった。
「びッくりして?」まず、平生通りの調子でこだわりのない声を出したかの女の酔った様子が、なよなよした優しい輪廓を、月の光で地上にまでも引いている。
「また青木だろう?」
「いいえ、これから行くの」
「じゃア、早く行きゃアがれ!」僕はわざとひどくかの女を突き放って今夜もだめだとあきらめた。
「もう一つあげましょうか?」かの女は今一つ持っていた林檎を出した。
「………」僕は黙ってそれを奪い取ってから、つかつかと家にはいった。
一七
その後、吉弥に会うたびごとに、おこって見たり、冷かして見たり、笑って見たり、可愛がって見たり――こッちでも要領を得なければ、向うでもその場、その場の商売ぶり。僕はお袋が立つ時にくれぐれ注意したことなどは全く無頓着になっていた。
東京からは、もう、金は送らないで妻が焼け半分の厭みッたらしい文句ばかりを言って来る。僕はそのふくれている様子を想像出来ないではないが、いりもしない反動心が起って来ると同時に、今度の事件には僕に最も新らしい生命を与える恋――そして、妻には決して望めないの――が含んでいるようにも思われた。