Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
せいかぞく
聖家族
堀 辰雄
Leggi 聖家族 (せいかぞく) di 堀 辰雄 (ほりたつお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.074 caratteri · 33 schermate
――或る日、彼がその部屋へはいって行くと、新聞とか雑誌とかネクタイとか薔薇とかパイプなどの堆積の上に、丁度水たまりの上に浮んだ石油のように、虹色になって何かが浮んでいるのを彼は発見した。
それは、よく見ると、一つの美しい封筒だった。裏がえすと細木と書いてあった。そしてその筆跡は彼にすぐこの間のメリメ書簡集のなかに発見した古手紙のそれを思い出させた。
彼は丁寧に封筒を切りながら、ひょいと老人のような微笑を浮べた。何も彼も知っているんだと言った風な……
――扁理はそんな風に二通りの微笑を使い分けるのだ。子供のような微笑と老人のような微笑と。つまり、他人に向ってするのと自分に向ってするのとを区別していたのだ。
そしてそういう微笑のために、彼は自分の心を複雑なのだと信じていた。
扁理にとって、細木夫人との二度目の面会が、その前のときよりもずっと深い心の状態においてなされたのは、そういうエピソオドのためだった。細木夫人の部屋は、彼の夢とは異って、装飾などもすこぶる質素だった。決してイギリス風でも、巴里風でもなかった。そしてそれは彼に何となく一等船室のサロンを思わせた。