Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おに

聴雨・蛍 織田作之助短篇集

織田 作之助

Leggi 聴雨・蛍 織田作之助短篇集 (おに) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.483 caratteri · 41 schermate

Aozora Bunko

十日ほどたって、また行くと、しょげていた。

「何だか元気がないね」

「新券になってから、煙草が買えないんだ」

「旧券のうちに、買いためて置くという手は考えたの」

「考えたが、外出する暇がなくってね。仕事に追われていたんだ」

と相変らずだった。

「原稿料もどうやら封鎖になるんじゃないかな。どうせ書きまくったって、新券ははいらぬのだし、煙草も吸えぬし、仕事はへらすんだね」

そうなれば、夫婦仲もうまく行くだろうと言うと、

「へらすと言ったって、途中でやめるわけに行かぬ連載物が五つあるんだ。これだけで一月掛ってしまうよ。あと、ラジオと芝居を約束してるし、封鎖だから書けんと断るのは、いやだ。もっとも、文化文化といったって、作家に煙草も吸わさんような政治は困るね。金融封鎖もいいが、こりゃ一種の文化封鎖だよ。僕んとこはもう新円が十二円しかない」

「少しはこれで君も貯金が出来るだろう」

ひやかしながら、本棚の本を一冊抜きだして、バラバラめくっていると、百円札が一枚下に落ちた。

「おい、隠匿紙幣が出て来たぞ」

「おや、出て来たのか。しかし、隠匿じゃない、忘却紙幣だ。入れたまま忘れてしまっていたんだ。