Classici giapponesi con furigana
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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
Leggi 肌色の月 (はだいろのつき) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 50.706 caratteri · 101 schermate
伊那はいま藤のさかりでしょう。みなさま、お元気のよし、なによりです。先日、勝手なことをおねがいしましたが、さっそくご承知くださいましてお礼の申しようもございません。今日、日通から身の廻りのものを貨物便で送りました。ちょっと和歌山へ帰って、それからそちらへ伺うようになりますので、それまで雑倉の隅へでもお置きくださるようおねがいいたします。
もう仕残したことはなにもない。衣裳と小道具の入ったボストン・バッグをさげて部屋を出るだけ。ハガキをポストに投げこんで、どこかの安宿で衣裳を換えて、たぶん伊東行の湘南電車に乗る……。
宇野久美子は完全犯罪を行なおうとしている。ただし、久美子の場合、殺そうというのは他人ではなくて自分自身なのであった。
……生活するということは、昨日と明日の継ぎ目を縫うことだと、なにかの本に書いてあった。ラジオ劇場の台本にあったセリフだったかもしれない。
「うまいことをいうもんだわ」
久美子は出窓の鉄の手摺子に凭れ、眼の下の狭い通りを漠然とながめながら唇の間でつぶやいた。
「この人生に明日という日が無いということは、継ぎ目を織る、今日の分の糸がないということなんだ」