Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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じゆうじん

自由人

豊島 与志雄

Leggi 自由人 (じゆうじん) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 69.030 caratteri · 139 schermate

Aozora Bunko

不安なものが、しだいに、わたしの胸に濃く淀んでいった。何かある。わたしの知らない秘密が、何かある。

わたしは紹興に行ってみようと思いついた。一人ではへんだから、北村さんをそそのかして、連れていって貰うことにした。家の人たちには内緒なのだ。北村さんは家と親戚になるのだが、あまり評判はよくない。飲んだくれということになっていて、酒と貧乏とがつき物だ。またペンキ屋さんという影口もある。あの人の書く絵がペンキ屋の絵に似てるというのだ。北村さんに言わせると、それは、極端にマチエールを生かしてるからだとの自慢になる。そのペンキ屋さんに、わたしは気まぐれな絵を習ってるのである。

「表向きには営業は出来ないことになっているから、うまい物はないよ。ただ……君が酒を飲むといいんだがね……。」と北村さんは言った。

料理も酒も、わたしにはどうでもよいのだ。菅原洋平さんが、北村さんの二階に住んでいて、朝食はそこですまし、夕食はたいてい紹興でする、そのことをわたしは知っていた。

往来からすぐ硝子戸になってる粗末な家で、とっつきの土間のわきに、二階への階段がある。その階段を北村さんが昇ろうとするのを、わたしはさえぎって、他に客がないのを幸に、土間の片隅の卓をえらんだ。