Classici giapponesi con furigana
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せんいのたちば
船医の立場
菊池 寛
Leggi 船医の立場 (せんいのたちば) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.712 caratteri · 22 schermate
我らが多年の計策は、一朝にして失敗せり。しかして今や我らは、隘屋のうちに禁錮せられ、飲食、休息、睡眠すべて困難なり。我らは、この囹圄より脱する能わず。泣かんか、愚人のごとし。笑わんか、悪漢のごとし。嗚呼、我らは黙して已まんのみ。
提督ペリーをはじめ、先夜の会議に列した人々は、揃ってこの訳文を読んだ。そして、銘々に深い感激を受けずにはおられなかった。
「なんという英雄的な、しかも哲学的な安心立命であろう」
提督は深い溜め息とともにそう呟いた。
不意に、歔欷の声が一座をおどろかした。それは、若い副艦長のゲビスであった。
提督は、ゲビスのそばに進みよって、その肩を軽打した。
「そうだ。君の感情がいちばん正しかったのだ。君はこれからすぐ上陸してくれたまえ。そして、この不幸な青年たちの生命を救うために、私が持っているすべての権力を用うることを、君にお委せする」
ゲビスは、それをきくと、勇み立って出て行った。
ワトソンは、心の苦痛に堪えないで、自分の船室へ帰って来た。が、そこにもじっとしていることができなかった。彼は、自分の船医として主張した一言が、果して正当であったかどうかを考えずにはおられなかった。