Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Leggi 花と龍 (はなとりゅう) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 410.131 caratteri · 824 schermate

Aozora Bunko

金五郎は、へこたれたが、意地っ張りなので、待ったはいわない。持駒と盤面とを等分に睨めまわして、起死回生の策を練っている。

「江戸ッ子なら、もう、投げる時分じゃがなあ」

そんな嫌がらせをいっていた甚七は、ふっと、窓の外を眺めて、

「金さんや、また、喧嘩らしいぞ」

煙管で、詰所の方角を指さした。

金五郎は、ちらと、そっちを見ることは見たが、すぐに、盤に、眼を落した。

「ほっとけ。喧嘩商売の奴なんか、相手にすんな」

「金さん、金さん、ちょっと、見ろよ。ありゃあ、森の新さんじゃねえか」

新之助の名をきいて、金五郎は、あらためて、顔をあげた。ガラス越しに、瞳をこらした。

仲間たちにかつがれて行く、血だらけの男が、親友だと知ると、新之助は、おッと叫んで立ちあがった。表に飛びだした。将棋盤がひっくりかえり、駒が散った。

それから、十分ほど後、金五郎は、顔面を怒りで紅潮させながら、山下親方の屋敷の方角へ、急いでいた。

(いくら、吉田親分でも、無道は、許さぬ)

病院へかつぎこまれた弟分の新之助のむざんな姿を見たときから、その憤りは、全身をふるいたたせていた。

新之助は、意識朦朧となって、口をきくことができなかったけれども、理由をきく必要はない、と思った。