Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Leggi 花と龍 (はなとりゅう) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 410.131 caratteri · 824 schermate

Aozora Bunko

玉井をはじめ小方は、もう、燈台沖までも漕ぎ出しとる。肝腎の永田親方が居らんで、すみますかって」

いったん引っこんだサクは、まもなく、あらわれた。長襦袢のうえに、羽織を引っかけている。髪のほつれも、かきあげていた。

「旦那は、どうしても、お起きになりませんわ」

「死んどるとですか?」

「いえ、死んでは居られんけんど……」

「死んどらん者が、起きんわけがありますか? あんた、ほんとに、起したの?」

「ずいぶん、声をかけてみたのですけど、……ひどく酔ってらっしゃるもんだから……」

「ちょっと、失礼」

マンは、玄関の上り框に、提灯を置くと、草履をぬいで、つかつかと、奥に通った。

家は狭いので、すぐに、永田杢次の寝ている蒲団が見えた。部屋は、青白い。天井のガス燈のマントルが、白い布地の網を、呼吸でもしているように、明かるく、鈍く、光らせている。饐えたような異臭が、鼻を打った。朱の剥げ落ちた箱枕が、永田杢次のビリケン型の禿頭の横にころがり、うつぶせになった半裸体の中老人は、奇妙な恰好に、腕と足とをよじらせて、鋸の目立てのような鼾を、かいている。

マンには、その親方の姿が、鬼火に照らされた墓場で、棺から発きだされた屍骸のように、見えた。