Classici giapponesi con furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Leggi 花と龍 (はなとりゅう) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 410.131 caratteri · 824 schermate
いつか、時次郎とマンとが、二人いるところへ、旅先から帰って来た金五郎が、突然、あらわれ、
「間男、見つけたぞ。打ち斬ってくれる。二人とも、そこへ、坐れ」
と、怒鳴ったことが、思い出された。
(ふン、人のことどころか、こっちが、重ねておいて、四つに、打ち斬ってやろうか)
マンは、助広の短刀の在り場所などを考え、憎々しげに、心中で、そんなことを呟いてみた。しかし、その強気にもかかわらず、天地のくずれ落ちる中へ、ぐんぐん、吸いこまれてゆくような、いいようもない寂寥と、孤独感とが、全身を包んでいた。涙が、とめどもないように、後から、後から、湧きあがって来る。
その癖、
「ヘン、男は、あんた一人か」
そんな不貞腐れた言葉を、蓮っ葉に呟きながら、しきりと、荷物ごしらえをした。
桐箪笥から、数枚の着物、肌襦袢、腰巻の類をとりだして、風呂敷に包んだ。激情の果てのためであろうか。いつになく、腹の子供がひどく動く気配を、しきりに感じる。
(こんな子供まで、生まれようというのに……)
そう思うと、さらに、新しい涙が流れた。
旅支度を整えると、蒲団をしいて、もぐりこんだ。いつもは、二つならべる枕を、自分のだけにした。