Classici giapponesi con furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Leggi 花と龍 (はなとりゅう) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 410.131 caratteri · 824 schermate
喧嘩の名残りか、跛を引いていて、右足の傷も刀痕らしい。色黒で、人相の悪い、「小猿の久八」という、五十男である。
間もなく、出て来た。憎々しげな語調で、
「おれのいうたとおりじゃよ。親分は、いわっしゃった――玉井金五郎が、なんの用で、おれに逢いに来るか。おれを殺しに来たんじゃないか。玉井なんちゅう奴の顔、見るのも、いやじゃ。追い返してしまえ。……って。とっとと、帰れ」
「さよですか。そんなら、帰ります。どうぞ、親分さんによろしゅうに」
表に出た金五郎が、町角を曲りかけたとき、背後で、けたたましい呼び声が起った。
「ピス来い。ピス来い。ピス、ピス、ピス、ピス……」
ふりかえると、先刻の玄関番が、鯛をのせた皿を両手にかかえて、しきりに、呶鳴っている。そこは、吉田邸の裏口に当っていた。ごみため箱が置いてある。やがて、松林のある寺の方角から、一匹の犬が走って来た。茶褐色のたくましい土佐犬である。ピスというのは、その犬の名らしい。
「ほら、御馳走やるぞ」
「小猿の久八」は、魚を、犬に投げあたえた。大小二枚の新鮮な鯛は、生きているように、空間に躍り、鱗が太陽の光線にきらめいた。