Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Leggi 花と龍 (はなとりゅう) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 410.131 caratteri · 824 schermate

Aozora Bunko

その瞬間まで、金五郎は、お京のことを考えていた。

昔、江崎満吉との仲なおりの席上、「飛鳥」の舞台で、お京の糸で、この芸題を語ったことがある。そのときの思い出は、「三勝半七酒屋の段」を語るたびに、つねに、金五郎の胸の奥底を、チクチク疼かせるのが例であったが、今日も、眼をうすくとじて、よい気持そうにうなりながら、お京の幻影を胸にえがいていた。

(お京は、どうしとるか知らん?)

しかし、その遠い感傷は、銃声によって、瞬時に、ふっとんだ。同時に、右耳に焼けるような熱さを感じ、そこから流れ落ちる赤い血を見た刹那、

(四国の田舎で、これと同じようなことがあったが、……)

黒石家に養子に行きながら、白痴女ヤスを嫌って、離縁になった直後、果物に群がるカラスを追う鉄砲に、実弾をこめて、誰かから射たれた思い出が、あざやかに、浮かびあがった。そのときも、同じ右の耳を負傷した。

場内が、どよめいた。

しかし、数秒も経たぬうち、金五郎は、見台から、顔をあげた。左手に持った四角折りの手拭で、右耳をおさえると、平気な顔で、

「……世の味気なさ、身一つに、結ばれ、とけぬ片糸の……」