Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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めばえ

芽生

宮本 百合子

Leggi 芽生 (めばえ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N3. Tocca una parola per il significato.

N3 · intermedio · kanji e kana moderni · 40.924 caratteri · 81 schermate

Aozora Bunko

男はこんな事を云った。彼の女の口元はキュッとしまった。そして、

「私はあんたのもんじゃあ始っからありません」

裁判官の様に重くひやっこく女の声は云った。

「御免なさい」

男は小さなふるえた声で云って原稿を机の上から取って読んで居た。女はさっきの事をもう忘れた様に歌を云って居る。

沢山の歌の中に、男は彼の女の気持を見つけ出した。そして木々の葉ずれ、虫の声、そんなものに霊をうばわれて小さいため息を吐き、歌をよみ、涙をこぼして居る彼の女をソーッと見て、もうこの人のきっと死ぬまで自然を恋して居る人に違いない……と思った。

それから二人は、歌をよみ合ったり、限りなく広い世の中を話し合ったり、会った時にはきっと真面目な考え深い時を送った。夜二時三時まで頬を赤くして亢奮した目つきで話し合ってその時男の云った事が合点が行かなくって一週間もつづけざまに一つ事を話し合った事もあった。彼の女の自然を愛する心は日毎に深くなって行った。男からはますます解らない謎のかたまりになって来た。けれ共云う事はお互によく分り合って居た。

「貴方は段々私に考えさせる様になって来る」

男はあけくれ机に向い自然とぴったりあって嬉しさにおどって居るまだ若い彼の女を見て居た。